「Nipponの酒―酒を学び酌み交わす」が2月10日に地酒『喜久醉』の蔵元、藤枝の青島酒造さんでおこなわれました。
今回の講座があったからNippon学を受講された方も何人かいらっしゃいました。
また参加者15名中なんとスタッフが9名とはこれいかに。担当スタッフを除いては、言わずと知れた『呑ベイ』な方々なのは写真を見てのとおりでしょう。
さてこの講座は、当日の参加だけでなくその前日から麹菌を殺さぬための配慮として食べ物の制限(納豆・ヨーグルト・ヤクルト・酢・乳酸菌の入ったサプリメントなど)そして当日お化粧、香水の禁止の『御触れ』が出されていました。
紅も差さずにスッピンで来られた女性陣はエライ。
写真を見ても十分どなたかわかりますよね。
「スッピンで人前に出るのってスカートは、はいているけど、おパンツは、はいていない感じかな。」とはある参加ご婦人のキワドイコメント(女性陣一同同感)
JR六合駅に13:40に集合して、長谷川隊長からごあいさつ、本日の概要説明の後、禁止事項のキビシイチェックが入り、皆さんクリアー、いざタクシーにて青島酒造さんに向かいました。
青島酒造さんは、旧東海道に面していて街道筋のにおいの残る昭和初期の総2階切妻の木造建築です。
中に入ると帳場から土間が奥に延び、縦格子の建具や大梁、小梁が見える踏天井の木組み構造がとても印象的です。
その帳場のある土間玄関で、青島 孝 専務取締役(兼 杜氏)がごあいさつ、御社の説明を受けた後、見学に臨むべく下足カバーとヘアーキャップを身に付け工場へと向かいました。
ところでこの時期というのは酒造りの最盛期であり、とても忙しいので見学を受け入れてくださったことには、とても感謝しております。
青島さん曰く「この時期は、基本的に関係者以外とは会わない、出かけない、休まない。
従業員達と寝食をともにし、肉類を断ち、頭まで丸めて酒造りに臨む。」とのことでした。
『酒の神』に仕えるためになんとストイックなことでしょうか。
さて酒造りに欠かせないのが豊富で清らかな水の存在で、当地には地下60メートルほどに大井川の伏流水の水脈がありこれを汲み上げています。この水は鉄分がほとんどなく、カルシウム、カリウムが適度に入っていて軟水質で目指す酒にはとても相性がいいらしい。
飲ませて頂いて、とてもまろやかな感じがいたしました。(後のお酒の試飲で、この水あってのこの酒であることに実感
つぎに麹をつくるにあたり、表面を砥ぎ落とした後の洗米をこしきに張り込むところをみせていただきました。そのお米のなんて白いこと。
その後水分を吸わせて蒸し、それを麹造り、もと造り、仕込みのそれぞれの工程に使われるとのことでした。そしてふだんでは見せてもらえない酒造りの聖域ともいえる麹室の中を見せて頂けました。麹とはご存知のとおり酒造りには欠かすことのできない菌であり生きています。常にその状態に注意して人の手で育んでいくとのこと。
その麹室の扉はまさに『天の岩戸』で中には神さまとか妖精とかの存在感がありました。
「青島さんが扉を開いて中を見せてくれるなんて、なかなかないことだよ。今日はすごくご機嫌だね。」とはお米屋さんの長坂さんの談。
使う麹も食べさせていただきました。生の栗の実のような、噛締めるとほんのりと甘い。
隣の大空間の建屋の中では、仕込み(もろみ造り)が行われ大きな仕込樽が並んでいて、いくつか仕込み時間の違いの様子を見せていただきました。
樽の中では発泡したもろみがプツプツと泡がはじけていて、キンと冷えた空気のなかでお酒の香りがなんともいえずまろやかでした。
その後ビン詰め工程、冷蔵庫、貯蔵庫などを見学した後、いよいよ待ちに待った『喜久醉』の試飲をさせていただきました。
このように飲み比べてみると6種類それぞれ香り、口当たりが微妙に違い、どれが好みなのかがよくわかります。
しかし、どれも飲み口はサラリとしていて、まろやか、スッと喉に入る感じで後には爽やかなフレーバーが残ります。
青島さんから「『喜久醉』は料理を引き立てる酒でありたい。この水、こだわった米、静岡酵母などがあっての『喜久醉』、まるで静岡の人、風土、気候そのものだと思います。」と、
そして「酒は生きものであり、造る過程の変化をマニュアルでの対応でなく、味や香りや手触りを含め五感、第六感で感じることが上手に育てることです。」このように愛情を持って造られていることが工場見学、試飲を通してよく理解できました。
彼は以前は世界を又にかけた金融マンで、その世界の醜さに嫌気がさし、ふと足をとめたときに、実家の酒造りに日本人のアイデンティティーを感じ、後を継いだとのことです。
「食うためだけの酒造業ではないことが大切だと思います。この手でこの土地でこの仲間達で本物を目指したい。でもたくさんは造れませんね。」
「和醸良酒」とはみんなで和をもって酒をつくるとの青島さんからのお言葉です。そんな思いが感じられたお酒でした。
『喜久醉』を口にした時「人と神との間合い、その精神的空間をうめるエーテルみたいなものが酒ではないだろうか。」
神事には万国共通、酒は付き物です。
個人的にはそんな感覚を持ちました。
今回の講座を通して参加者のみなさんも、たくさんの大切なことを青島さんから感じ取ったのではないでしょうか。
その後の宴会は『喜久醉』で料理を味わい、時の経つのを忘れてしまうほど、まったりとした時間でした。


点だった知識が 線になる様な印象を受けました。
自分は「酒造り」は神聖な作業と聞いていましたけれど、あまりピンとは 来ていませんでした。 青島さんは、そういうことをとても真摯に体現されていて、とても伝わりました。参加された人の中には「麹室に神様がいました」とか「神社を見せて頂いた気がします」そんな言葉も聴かれて、そういう感性ってちょっと鈍くなっていた気がして。
拡大解釈ですけれど、昔の日本の人は生活の中で色々な神様と暮していたのかな? と。
そういうもの今は薄れてしまっていて、そんなことを思う見学でした。
皆様の所作、その先にある研かれた酒米・・
タンクの中の呼吸ような声・・
その色・・
どれも美しく、それを、いとおしく大切にされている青島さんの言葉は、
それはそれは美しかった。
酒を知らなかった私は、これから、何とも美味しく
日本酒を味わうことを教えていただきました。
しあわせが、増えました。
(これは、スタッフとしても予想外でした。)
事前の打ち合わせでは、「この時期は表情も険しいですよ」とおっしゃっていた青島さんですが、研ぎ澄まされた美しさと父親のような愛情が溢れていましたね。